表紙用紙の選定と、束見本の制作
『遅日残光 完全版』の仕様を決め始めている。
こだわりは一つだけで、開きやすいこと。240ページは厚い。厚い本が開きにくいと読む人の手が疲れる。私は読む人の手に疲れることを望んでおらず、疲れるなら内容で疲れて欲しいと思っている。
製本はガンダレ製本にすると決めた。表紙を長くして、小口で内側に折り返す製本のことであり、同人誌の界隈ではフランス製本とも呼ぶらしい。表2・3や折り返し部分への仕掛けを想定しているが、これは副次的なもので、表紙用紙を部分的に重ねることで表紙そのものが厚くなくとも強度を出すことを目的として、ガンダレ製本を選ぶ予定である。
その製本方法を前提として、表紙の紙探しを始めることにした。表紙の紙を決めるということは、本を手に取った時の第一印象を決めるということに他ならない。これまで発行した同人誌はいずれも、触れた時、意味付けや記号が後景に下がり、生感がある紙を選んできたつもりだ(現パロのR18本は敢えてクリアPPという手触りで実験感を演出しているつもりである)。
高級感があり、記号的理解を求めず、表紙用紙としての強度を持つのに相応しい紙はないかと調べた結果――気包紙という紙に出会った。空気や気持ちを包む紙、という名称でパッケージ用として製作された用紙である。針葉樹パルプの配合率が高く、強度に優れ折り耐性が高いのが特徴で、紙厚を1ランク落としても強度が担保できるという。用紙価格は当然ながら紙の色の濃さや紙厚に比例して高くなっていくので、端的に言えば「高級感のあるふりをしながらコスパのいい紙」である。あと、パッケージ用というだけあって、耐光性にも優れており保管にも向いていそうである。
手触りを確かめるために、U-FS のディープラフ、ミディアムラフ、ライトラフの三種類を購入した。紙の特性であろうが、いずれも和紙っぽい風合いがあり、ディープラフはあたたかい、ミディアムラフはさらり、ライトラフはさわやかという印象を受けた。本の内容的に紙の質感が重要になってくるので今回はディープラフを本命に進めることにした。
表紙としての適性を図るために、斤量215.5kg と158.5kg のものを発注し、実際折ってみる。215.5kgは頼もしいがちょっと厚すぎるか、158.5kg は表紙の下限くらいの厚みだなということがわかった。
結局これは本の形にしてみないとわからないなということで、気包紙U-FS ディープラフの215.5kgと158.5kgを表紙用紙にできないかと印刷所に相談した。すると215.5kg は機械に入らないと言われた。入らないのか、物理的に。この断られ方に結構安心する。悩む余地がないからである。これがモノづくりの好きなところだなとつくづく思う。
というわけで、158.5kg で束見本を作成してもらった。束見本というのは、本番と同じ紙と同じページ数で作る、印刷される前の真っ白な本である。ガンダレの折り返しはA3版で製作できる上限の67mmと、定番の103mm の2種類お願いした。本文用紙は一番柔らかいニューバルギーである。数日後、白い本が届いた。一週間かかると言われたが、数日後に来た。仕事が早過ぎる。一枚で折った時の頼りなさは本にするとそこまで感じないし、開きやすさは申し分ない。ガンダレの折り返し部分の折り筋も美しい。しかし問題は別のところにあった。
でかい。物としてでかい気がする。
リサーチのために240ページ前後の再録本をジャンル問わず購入していたし、家にあるA5版コミックスを何度も開いて研究したから質量はわかっているはずだった。けど、なんかでかいのだ。判型もページ数も全部自分で決めたのに、届いた白い塊は、知らないサイズをしていた。持つとずしっとくる。片手に収まらない。捲ると、動作が大きい。この動作を240回、読む人に強いるのか? 開きやすい、物理的に読みやすいことを目指してきたが、判型で手が疲れたら意味がないのではないか。頭の中にB6 という選択肢が浮かんだ。
B6の方がいいかも、と思ったのにはもう一つ理由がある。7月にサンプルとして配るためにすでに描き上がったページをA5の本として刷ったのだが、自分の絵が大きく見えた。大きく見えて、野暮ったかった。いろんな人に励ましのコメントをいただいた、出張編集部でも「絵は上手いです、大丈夫です」とのコメントをもらった。けれど、本当に自分の厄介な性格に辟易するのだが、これを240ページ読ませるんですか!?というのが、本を開いた時の率直な感想だった。つまり、自信がないのだ。励ましてもらったのに! 自分の絵を小さく出力すればいくらか見栄えがするのではないか……というのがB6という選択肢の本音である。
何が言いたいかというと、束見本は早めに作った方がいいということである。紙の質も判型の大きさも、自分の自信のなさも、データの上では一切わからない。白い本のかたちになって、はじめて手元に届く。
ちなみにB6にするかはまだ決めていない。決めていないが、B6の束見本を再度発注し(折り返し幅ももう少しノド側に伸ばしたバージョンも制作しようと思う)、B6 で1冊だけ試し刷りしようと考えている。

でかい。存在感がある。

折り返しが短いなあ

やっぱりでかい気がする

もう少し折り返し部分が多くてもいいかも
畳む
『遅日残光 完全版』の仕様を決め始めている。
こだわりは一つだけで、開きやすいこと。240ページは厚い。厚い本が開きにくいと読む人の手が疲れる。私は読む人の手に疲れることを望んでおらず、疲れるなら内容で疲れて欲しいと思っている。
製本はガンダレ製本にすると決めた。表紙を長くして、小口で内側に折り返す製本のことであり、同人誌の界隈ではフランス製本とも呼ぶらしい。表2・3や折り返し部分への仕掛けを想定しているが、これは副次的なもので、表紙用紙を部分的に重ねることで表紙そのものが厚くなくとも強度を出すことを目的として、ガンダレ製本を選ぶ予定である。
その製本方法を前提として、表紙の紙探しを始めることにした。表紙の紙を決めるということは、本を手に取った時の第一印象を決めるということに他ならない。これまで発行した同人誌はいずれも、触れた時、意味付けや記号が後景に下がり、生感がある紙を選んできたつもりだ(現パロのR18本は敢えてクリアPPという手触りで実験感を演出しているつもりである)。
高級感があり、記号的理解を求めず、表紙用紙としての強度を持つのに相応しい紙はないかと調べた結果――気包紙という紙に出会った。空気や気持ちを包む紙、という名称でパッケージ用として製作された用紙である。針葉樹パルプの配合率が高く、強度に優れ折り耐性が高いのが特徴で、紙厚を1ランク落としても強度が担保できるという。用紙価格は当然ながら紙の色の濃さや紙厚に比例して高くなっていくので、端的に言えば「高級感のあるふりをしながらコスパのいい紙」である。あと、パッケージ用というだけあって、耐光性にも優れており保管にも向いていそうである。
手触りを確かめるために、U-FS のディープラフ、ミディアムラフ、ライトラフの三種類を購入した。紙の特性であろうが、いずれも和紙っぽい風合いがあり、ディープラフはあたたかい、ミディアムラフはさらり、ライトラフはさわやかという印象を受けた。本の内容的に紙の質感が重要になってくるので今回はディープラフを本命に進めることにした。
表紙としての適性を図るために、斤量215.5kg と158.5kg のものを発注し、実際折ってみる。215.5kgは頼もしいがちょっと厚すぎるか、158.5kg は表紙の下限くらいの厚みだなということがわかった。
結局これは本の形にしてみないとわからないなということで、気包紙U-FS ディープラフの215.5kgと158.5kgを表紙用紙にできないかと印刷所に相談した。すると215.5kg は機械に入らないと言われた。入らないのか、物理的に。この断られ方に結構安心する。悩む余地がないからである。これがモノづくりの好きなところだなとつくづく思う。
というわけで、158.5kg で束見本を作成してもらった。束見本というのは、本番と同じ紙と同じページ数で作る、印刷される前の真っ白な本である。ガンダレの折り返しはA3版で製作できる上限の67mmと、定番の103mm の2種類お願いした。本文用紙は一番柔らかいニューバルギーである。数日後、白い本が届いた。一週間かかると言われたが、数日後に来た。仕事が早過ぎる。一枚で折った時の頼りなさは本にするとそこまで感じないし、開きやすさは申し分ない。ガンダレの折り返し部分の折り筋も美しい。しかし問題は別のところにあった。
でかい。物としてでかい気がする。
リサーチのために240ページ前後の再録本をジャンル問わず購入していたし、家にあるA5版コミックスを何度も開いて研究したから質量はわかっているはずだった。けど、なんかでかいのだ。判型もページ数も全部自分で決めたのに、届いた白い塊は、知らないサイズをしていた。持つとずしっとくる。片手に収まらない。捲ると、動作が大きい。この動作を240回、読む人に強いるのか? 開きやすい、物理的に読みやすいことを目指してきたが、判型で手が疲れたら意味がないのではないか。頭の中にB6 という選択肢が浮かんだ。
B6の方がいいかも、と思ったのにはもう一つ理由がある。7月にサンプルとして配るためにすでに描き上がったページをA5の本として刷ったのだが、自分の絵が大きく見えた。大きく見えて、野暮ったかった。いろんな人に励ましのコメントをいただいた、出張編集部でも「絵は上手いです、大丈夫です」とのコメントをもらった。けれど、本当に自分の厄介な性格に辟易するのだが、これを240ページ読ませるんですか!?というのが、本を開いた時の率直な感想だった。つまり、自信がないのだ。励ましてもらったのに! 自分の絵を小さく出力すればいくらか見栄えがするのではないか……というのがB6という選択肢の本音である。
何が言いたいかというと、束見本は早めに作った方がいいということである。紙の質も判型の大きさも、自分の自信のなさも、データの上では一切わからない。白い本のかたちになって、はじめて手元に届く。
ちなみにB6にするかはまだ決めていない。決めていないが、B6の束見本を再度発注し(折り返し幅ももう少しノド側に伸ばしたバージョンも制作しようと思う)、B6 で1冊だけ試し刷りしようと考えている。




畳む





























